M-1グランプリ 2020は、過去最も審査員によるネタの好みが分かれる大会でした。
史上最多の5081組がエントリーした今大会では、従来まであった3回戦を廃止。
2回戦後に準々決勝が行われたため、芸人さんもネタの選定に戦略を立てたようです。
そこで今回は、M-1グランプリ 2020の見どころについてご紹介します。
大会直後に行われた、【GYAO! M-1グランプリ 2020 世界最速大反省会】のコメントにも触れながら解説していきますよ!
過去最もネタの好みが分かれた、M-1グランプリ2020
M-1グランプリ2020は、過去最もネタの好みが分かれた大会でした。
最終決戦は過去例を見ないほどに票が割れ、審査員の松本さんも「いつもは2組で迷うが、今年は3組ともで悩んだ」と発言していたくらいです。
結果、優勝したのはマヂカルラブリーですが、「誰が優勝してもおかしくない」そんな大会でした。
【M-1グランプリ2020 最終決戦の投票結果】
マヂカルラブリー(3票):サンド富澤、志らく、中川家礼二
見取り図(2票):オール巨人、ナイツ塙
おいでやすこが(2票):松本、上沼
GYAOの大反省会でも、見取り図・盛山さんが「全札が出たとき、誰が優勝したのかわからなかった」と言っています(ボケかもしれませんが)。
個人的にもファイナリストの顔ぶれを見て、優勝候補と言える優勝候補がいなかったので、まさに僅差の戦いだったと思います。
和牛が不在の2020年
2020年のM-1は、“和牛” のいない大会でした。
和牛は2015年から5年連続で決勝に進出、3年連続で2位になるなど、近年のM-1を代表するようなコンビ。
後半にグッと笑いが延びる、安定感のある漫才には、観客も審査員も誰もが納得します。
でも、今年はその和牛が欠場。
M-1グランプリ2019の打ち上げ配信で、和牛の二人が「今年でM-1の出場は最後にする」と宣言していたとおり、2020年はM-1に出ないことを前々から決めていたようです。
思うに2020年のM-1が僅差の戦いとなった理由には、この和牛の欠場も影響しているのでないかと思います。
和牛の巧みなネタと実力なら、ぶち抜けた点数で優勝することも不可能ではありません。
ただ、本人たちも言っているとおり、和牛は長尺のネタを得意とするので、M-1のように持ち時間が短い大会では、「本来の実力を発揮でない」という悩みもあったのでしょう。
結局は“たられば”の話になってしまいますが、和牛のいないM-1は少し寂しかったですね。
1組目に敗者復活戦は興奮する
おそらく初めてだったと思いますが、M-1グランプリ 2020は、敗者復活戦のコンビが1組目としてスタートしました。
ネタ順はくじ引きで決定するので、ありえない話ではありませんが、異例の事態に見ていて興奮しましたね。
予定調和を崩すというか、こういう展開があるからこそ、見ていておもしろいのでしょう。
インディアンスは、トップとして最高の働きをした
敗者復活戦から上がってきたインディアンスは、トップバッターとして最高の働きをしたと思います。
敗者復活戦で勝ち上がるコンビは急に会場に呼ばれるので、ただでさえ落ち着かない心境。加えてトップは、さらに緊張する状況です。
それにもかかわらず、インディアンスはいつもどおりの実力を発揮していました。
M-1はネタ順も大事で、誰がトップにくるかで会場の雰囲気は左右されます。
今回のインディアンスのように明るく、ボケの手数の多い漫才が最初にくるとムードもいいですね。
わりと重たい空気から始まることも多いM-1ですが、今年はインディアンスのおかげで、会場の雰囲気も良く、スタートできたと思います。
自信作ネタを最終決戦に持ってきたマヂカルラブリー
M-1グランプリ 2020では、マヂカルラブリーが優勝を飾りました。
優勝できた理由はもちろん本人たちの実力ですが、予選と決勝のネタ選びの部分でも戦略を立てていたとされます。
【マヂカルラブリーのネタ】
1本目:フレンチ
2本目:電車
マヂカルラブリーの野田クリスタルは、優勝会見や【GYAO! M-1グランプリ 2020 世界最速大反省会】で、「今年は死ぬ気でちゃんとやってきた」とコメントしていており、今年のM-1に勝負をかけていました。
最終決戦に持ってきた「電車」は、準決勝で披露したネタなのですが、このネタを1本目にやるか2本目にやるかは、予選で “おいでやすこが” の漫才が終わり、CMに入ったところで決めたそうです(マヂラブの出番は、おいでやすこがの直後)。
野田クリスタルも発言していたように、これは優勝の可能性を残すための賭けだったとのことですね。
そして、これが良かった。
1本目の「フレンチ」は一回一回立ち位置に戻るネタで、最初の入店シーンこそ、いきなりの野田ワールドで驚きと爆笑でしたが、ショートコントの連続のような感じでした。
そのため、一本目のネタで言えば「 “おいでやすこが” と “見取り図” の方が面白かったのでは」と思います。
でも、最終決戦に取っておいた2本目のネタは、野田の良さが引き立つ構成。
野田のボケを止めない流れをつくることで、完全に野田ワールドに引き込んだなという感じがしました。
野田の勢いそのままにスムーズなネタが展開されたので、漫才全体に一体感がありましたね。
この「勢い」と「一体感」が、会場の笑いを増幅していったのだと思います。
他のコンビも、ネタ選びについては試行錯誤していたと思いますが、今年マヂカルラブリーが優勝できた理由には、少なからずこのネタ選びの戦略が関係しているでしょう。
ピン芸人の即席コンビ「おいでやすこが」が凄すぎた
M-1グランプリ2020で最も印象に残ったコンビといえば、やはり「おいでやすこ」です。
マジでおもしろすぎました。
こがけん、おいでやす小田は、お互いピン芸人同士。
R1ぐらんぷりの出場権改正により、お互い出場できなくなったことでコンビを組んだため、結成わずか1年です。
おいでやす小田の序盤こそ落ち着いているのに、後半どんどんアグレッシブになっていくツッコミにはやられましたね。
絶叫なのにうるさくなく、ストレートで気持ちいいのツッコミ。
最近のツッコミは変化球だったり、ボケ的ツッコミだったりが多いので、おいでやす小田のような、思い切り気持ちをぶつけただけのツッコミは最高ですね。
アンタッチャブル柴田ばりのパワフルなツッコミに、久々に痺れました。
予選一位通過が決まったときの、動揺したふわふわした感じも即席コンビっぽくて良かったです。
いよいよブレイクの予感!ニューヨーク
今年のM-1を見て、「いよいよニューヨークのブレイクも近いかも」と感じました。
2年連続ファイナリストに選ばれているだけに、当然実力はあるのですが、特徴がないというか、どこか地味な印象があったニューヨーク。
しかし、M-1グランプリ 2020で見せた、少しヒヤヒヤするような毒の効いた漫才は、彼らの自然体の雰囲気もあって見やすく感じました。
芸から人間性が滲み出てきた、とでも言うのでしょうか。
本人たちも大反省会で「自分たちのカラーが出た。マヂラブさんのように(個性を)突き詰めて優勝したい」とコメントしていました。
芸人が認める実力者が、いよいよお茶の間に本格的に受け入れられそうな予感がします。
マヂラブのネタは、漫才なのか問題
一部で「マヂカルラブリーのネタは、果たして漫才なのか?」という論争が起きています。
個人的には「マヂラブのネタは漫才とは呼べない」と思っているのですが、ただおもしろいのは事実。
それなら、それでいいのではないでしょうか?
マヂラブのような動きの多い漫才は過去にもありましたし、近年のM-1でもよく見かけるスタイルです。
和牛にもコントに近い漫才がありますし、2018年に優勝した “霜降り明星” のネタも、厳密にいえば漫才と言えるかどうかわかりません。
仮にマヂカルのネタが「漫才ではない」とした場合、それでも独自のスタイルを貫いて、5000組以上の中からファイナリストに残ったのだとすれば、それはすごいことだと思います。
ただ、このあたりの「漫才か、漫才でないか」の論議は、優勝争いにも影響していました。
審査員のオール巨人さんは、優勝がマヂラブに決定した後のコメントで「今回は三者三様。でも、漫才師だからしゃべりを重点的に見てしまう」と発言しており、最終決戦では、見取り図に投票しています。
この一言が僅差の戦いとなった、今大会の様子を物語っていました。
来年はM-1審査員が、ガラリと変わる可能性あり
M-1グランプリ2020の審査員紹介のシーンでは、数人の審査員が「今年で最後にする」的なコメントをしていました。
最初に発言したのは上沼さんでしたが、その後オール巨人と志らく師匠も「出ないつもりだった」「最後にしようと思う」などと発言したことで、妙な空気になりましたね。
また、マヂカル・野田クリスタルさんも言っていましたが、今年は上沼さんに怒られる芸人さんがいませんでした。
上沼さんがどういった心境であったかはわかりませんが、「最後の審査」を意識しての行動だったのかもしれません。
「来年のM-1は、審査員の顔ぶれが大きく変わるかもしれない」
そう感じさせる、審査員たちのコメントでした。
まとめ
今年はコロナの影響もあって、スタッフも大会開催には大変な苦労をしたようです。
芸人さんとしても、観客の前で漫才を披露する機会が少ない一年だっただけに、久々にお客さんの前でネタができることに喜びを感じていた人も少なくありませんでした。
M-1ファンとしては、今年も無事に開催してくれて良かったなーと思います。
来年のM-1開催も楽しみですね。
【過去のM-1作品はこちら】